「ドイツの農地制度〜クラインガルテンについて」その1

南ドイツ在住の正田美幸さんによるヨーロッパオーガニックフラワー情報。今回は、ドイツで200年の歴史をもつクラインガルテンという農地の賃借制度のレポートです。

世界はこの半年で一変し、人々の生活様式も変わりつつありますが、このコロナ禍をどのようにお過ごしでしょうか?
夏本番を迎え、暑さと日照りの中でドイツの庭先にもたくさんの花々が賑やかに彩りを添え、コロナ禍の陰鬱な気配を忘れさせてくれる優しさを人々に与えています。

やはり、植物は心の安定にとても良いものですね。

3月から日本に滞在していた筆者も日々花屋を覗き込み、例年よりも人の出入りが多いように感じ、花を飾ることがstay homeや一家団欒に一役かっているのだろうと推測していました。反面、花ロスという現象も起きていたのも事実のようです。

ドイツに戻っても、愕然としたのが花屋さんの閉店でした。
この花屋さんは周辺のオーガニック花農家さんからの仕入れ、そして薔薇などはアフリカ・ケニアからの入荷をしているとのことでしたが、閉店されているのを目の当たりにした時は大変ショックでした。

さて、このように人々の暮らしが不安定になっていく状況の中で、ここドイツの歴史的な背景から現在も存続されている、日常生活を営む上での素晴らしい制度をご紹介いたします。

それは、クラインガルテンという農地の借地制度。日本語で直訳すると「小さな庭」です。

季節の野菜に花々、子供たちの遊具や憩いのテーブル・椅子、そして小さな小屋。

冬枯れの時期になると落ち葉や落ちた果物をコンポスト作りに、春には草木が芽吹き、夏には盛んに蜂がやってくる花々、そして秋には野菜や果物がたわわに実る。
四季折々に植物の豊かな装いを拝ませていただいています。

いつかこの庭を所有する友達ができないかしら、と思っていたら、昨年ようやく借用できるようになったという日本人の友人が現れ、この「小さな庭」へ招待してくれました。

私の住むシュツットガルトは丘を利用した葡萄畑が多く、ワインの産地でもあります。
友人のクラインガルテンも100年前は葡萄畑だったとのこと。
土地の傾斜を開発することもなくそのままの形で残し、クラインガルテンとして提供している行政も素晴らしいと感じました。

この葡萄畑として使われていた土地の傾斜はもちろん、かなりのもの。
どちらかというと歩きにくい土地でしたが、ベルリン出身のご主人と共に果樹や野菜を育て始め、憩いの場・そして花壇・ビオトープなどを時間をかけてゆっくりと作り上げていく彼女の姿がとても生き生きとして、眩しく思えました。

人間の便利さのみを追求せず、自然の保護とともに暮らし、不便さの中にこそ真の人間らしさが潜んでいることを知っているドイツ人の生き方にいつも学ぶことが多い筆者であります。

初めて訪れたのは秋も深まる日。作物もわずかでしたが、たわわに実った宝石のような可愛いトマトの美味しいこと。ローズヒップやメリッサの葉も摘ませていただきました。
そして、今年7月にはテラスでのランチ会。完成したテラスや畑が見事でした!

ベルリンでは、ご主人のお祖父さんお祖母さんの代からクラインガルテンで野菜作りをし、現在はご両親が受け継いでいるようです。
この歴史ある庭は一体どのようなものなのだろうか疑問に思い、調べてみました。

続く…